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参院選の結果を伝える新聞各紙の1面

 7月20日投開票の参院選では、メディア各社がファクトチェックを積極的に行うなど、従来とは異なる報道姿勢で臨んだ。選挙を巡る情報空間はどう変わったのか。浮かび上がった課題とは。

衆院選の5倍超 外国人めぐる発言に集中

 ファクトチェックの推進に取り組むNPO「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)は、参院選を巡る各社のファクトチェック記事をまとめている。この中から、公示日から投開票日までに掲載・配信されたものを朝日新聞が集計すると計186本あった。FIJがサイトで掲載している昨年の衆院選関連と比べると、今回の記事数は5倍超にのぼった。

 この186の記事について朝日新聞が内容や発信元ごとに整理して分析すると、テーマ別では、外国人をめぐる発言や言説が3割超で最多だった。「外国人犯罪が急増」「外国人が優遇されている」といったSNSの言説などが誤りだと検証された。外国人関連のファクトチェックの7割は選挙戦終盤1週間に集中していた。

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 チェック対象は5割超がSNS上の言説で、約2割は参政党の党首や候補者の発言や投稿だった。

 新聞、通信社やテレビ局の127記事のうち、最多は神戸新聞の16本だった。同紙は昨年の兵庫県知事選で虚偽や真偽不明の情報がSNSで拡散された経緯を踏まえ、参院選に向けてファクトチェックを本格的に行うと宣言していた。

相次ぐ「差別的発言」 メディアの対応は

 慶応大の山腰修三教授(メディア論)は「昨年の東京都知事選や兵庫県知事選をきっかけに真偽不明情報や誹謗(ひぼう)中傷の拡散が問題化していた。そうした中で迎えた参院選だったが、選挙報道は随分変わったと思う。ファクトチェック以外にも、政治家や候補者の問題発言を以前より積極的に報じた」と見る。

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山腰修三・慶応大教授=2025年7月11日、東京都港区、後藤遼太撮影

 参政党の神谷宗幣代表は公示日の第一声で、「子どもを産めるのも若い女性しかいない。高齢の女性は子どもは産めない」と発言し、新聞各紙やテレビ各局が取り上げた。朝日新聞は当日報じたほか、この発言が「政治の責任を放棄して少子化の原因を女性に押しつけている」などと指摘する識者らの解説記事も後日掲載した。

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